「品 格」
辰濃和男『文章の書き方』より

Reading Journal 2nd

『文章の書き方』辰濃 和男著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

<平均遊具品>の巻 — 品 格 

<平均遊具品>の巻の最後は、品格である。
著者は、まず谷崎潤一郎の『文章読本』の一説をひく。

「品格のある文章を作りますには、先ず何よりもそれにふさわしい精神を滋養することが第一でありますが、その精神とは何かと申しますと、優雅の心を体得することに帰着するのであります」「人と云うものは、匠(たくま)ずして自然に現れるべきもので、変に上品振つた様子が眼につくやうでは、本当でありません」(抜粋)

品格のある文章を書くには「まず優雅の心を体得しなさい」といわれ、筆者の筆が重くなってしまう。
しかし、そのヒントを中村武志の『百鬼園先生と目白三平』の中に見出す。この本の「百閒先生に序文をいただく」という章がある。中村が百閒先生に序文をいただくのだが、それは普通の序文ではなく著者への戒めの言葉だった。

「中村サンノ書クモノニツイテ、私ガ抱イテヰタル不満ハ、多クノ場合右ノ順序ガ逆ニナッテヰヤシナイカト思ハレル点ニアル。出発カラ面白イ事ヲ書コウト思ツテヰルノデハナイカト私ハ邪推スル。書イタ物ガ面白イノデナク、面白イ物ヲ書カウトスルノハ、自分ノ目ジルシヲ見馴レタ私カラ云エバ邪道デアル」(抜粋)

文章は、これを伝えたいという思いがあって書くものであって、読者を面白がらせるために書こうという意識が働くと下品になるのだと著者は言っている。

著者は、いくつもの文章を例にして、品のある文章には、「物事を静かに見つめるゆとりが必要」なこと「ぎょうぎょうしい表現をさけなければいけない」こと、さらに気功の「外三内七」という言葉にからめ「内にたくわえるものが七で、表現を三にとどめる」のが良いといっている。
そして最後に、こういって<平均遊具品>の巻を締めくくる。

文章の品格というものは、技術を超えたところにあります。文章技術はむろん大切です。がそれだけでは「品格」という巨大なものを肩にかつぐわけにはいかない。人間全体の力が充実しないと、肩にかつぐことはできないようです。(抜粋)

関連図書:谷崎潤一郎 (著)『文章読本』中央公論新社(中公文庫)  1996
    :中村武志 (著)『百鬼園先生と目白三平』旺文社(旺文社文庫)  1986

コメント

タイトルとURLをコピーしました