『聞く技術 聞いてもらう技術』 東畑開人 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第3章 孤立から孤独へ(その3)
今日のところは、第2章のその3。第2章では、その1で著者の「社会季評」の後、孤独と孤立の違いについて解説された。その2は、孤立した人をどう支援するかについてであった。これを受けて今日のところはこの孤立についてさらに深く追求している。そして、その支援の最大の問題が支援者も孤立してしまう孤立の連鎖であることが示される。
心の個室と日本社会
ここで話は、また心の中の個室に戻る。著者は、日本の社会の変化を顧みて、ここ20年で社会が個人単位にバラバラになり、一見人々は個室を得たかのように見えるが、実際はどうだろうか?と疑問を呈する。
90年代までは、日本社会はみんなが固まって団体で行動することが多かった。そこでは個が強く問われることはなく、安心していられる余白があった。しかし、それは周囲の人に干渉される社会でもあったということである。
ここで著者は、自身の経験、つまり大学(集団)を辞めて、カウンセリングオフィス(個)に移ったことを例にして、集団の中にいることと、個人で独立していることを比較している。
一見、集団から離れて個人になると自由は手に入るが、その代わりに人生が不安定になり心の個室で安穏としていられなくなる。そして、かつての大学には世間を気にしないでもよい分厚い個室があったことに気づく。
心の個室って逆接的なんですね。
本当にひとりぼっちのときには、心は個室をもてず、まわりにつながりがたくさんあるときのみ、個室が可能になります。(抜粋)
しかし、ここで問題なのは、現代は大船に戻っても個室が手に入るかどうかわからないということである。
今、社会のあらゆる場所が透明になることを求められています。(抜粋)
この組織では働く人の「見られる化」は、すなわち個室を失うことである。すなわち、組織の見える化は大事ですが、個人がしばしば隠れられる場所を残しておくことは大事である。
聞くから聞いてもらう技術へ
ここで著者は、「まとめましょう」と言って次のようにまとめている。
この章では孤立と孤独の違いから出発して、孤立とは心の内側では悪しき他者に取り巻かれている状態である、孤独とは心の内側にぽつんと一人でいられる個室を備えている状態であることを見てきました。
そのうえで、どうしたら孤立を防ぎ、心の個室を再建できるかを考えてきました。
難しいのは孤立が連鎖することでした。孤立した人に関わり、話を聞こうとすると、関わった人は悪しき他者として扱われてしまいます。
すると、その人の心に悪しき他者が伝染して、孤立感が生じてしまいます。(抜粋)
この状態を解消するためには「つながりの連鎖」が必要である。
誰かが話を聞くためには、その話を聞く人の話を聞く人が必要である。そのためここで「話を聞いてもらう技術」が必要になる。
そして著者はこのように言ってこの章を閉じている。
つながりって、能動的に築くものではなく、気がついたときには自分を取り巻いている受動的なものだと思うのです。
ならば、どのような小手先がつながりを発生させ、「聞いてもらう」という受動的な事態を引き起こしてくれるか。
これを次に見てみようと思います。(抜粋)
コメント