文末に気を配る / 流れを大切にする
辰濃和男 『文章のみがき方』 より

Reading Journal 2nd

『文章のみがき方』 辰濃和男 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

III 推敲する 7 文末に気を配る

「私は文章を書くとき語尾に手こずっている」(井伏鱒二)(抜粋)

日本語は動詞が語尾に来るので、文末(語尾)に手こずる。井伏鱒二は語尾に手こずっていると言っているが、出来上がった作品は見事である。
ここで著者は、井伏鱒二の作品を具体的に上げて、文末の処理について具体的に説明している。

また、戦後になると、より口語的な口語体、もしくは会話体、おしゃべり体のような文章が現れ、「です体」と「である体」が混じるだけでなく、「ですよ」「ではないかね」のような表現が混じり文末も多彩になっていった。

井伏鱒二の『文末』に関する苦労は、正統派の文章術に関するものであり、坂口安吾や伊丹十三の「文末」を自由に使う文章術は、「新おしゃべり体」のもの、といっていいでしょう。やや図式的にいえば、いまの若い人たちは、正統派とおしゃべり体との、二つの流れを上手に行きつ戻りつしているのではないでしょうか。(抜粋)

関連図書:
井伏鱒二(著)「『が』『そして』『しかし』」、吉行淳之介(編)『文章読本』、ベネッセコーポレーション(福武文庫)、1988年
井伏鱒二(著)『小黒坂の猪』、筑摩書房、1974年
坂口安吾(著)「戦後文章論」『定本坂口安吾全集(八)』、冬樹社、1969年
伊丹十三(著)「バッグ」『伊丹十三の本』、新潮社、2005年

III 推敲する 8 流れを大切にする

「文章のなかに一貫したリズムが流れることも、私にとってどうしても捨てられない要求であります」(三島由紀夫)(抜粋)

著者は冒頭に三島由紀夫の文章を引用し、さらにその後の文章はこうなっていると引用している。

「そのリズムは決して七・五調ではありませんが、言葉の微妙な置きかえによって、リズムの流れを阻害していた小石のようなものが除かれます。・・・・・小石をいろいろ置きかえて、流れのリズムを面白くすることに注意を払います。」(抜粋)

この後、著者は文章の流れについて木下順二の『夕鶴』を題材に具体的に解説している。そして良い文章の流れを作るためのポイントを4つあげている。

  1. 平明、そして明晰であること。
  2. こころよいリズムあること。
  3. いきいきとしていること。
  4. 主題がはっきりしていること。

関連図書:
三島由紀夫(著)『文章読本』、中央公論新社(中公文庫)、1973年
木下順二(著)『夕鶴・彦市のはなし』、新潮社(新潮文庫)、1954年
木下順二(著)『子午線の祀り』、河出書房新社、1979年

コメント

タイトルとURLをコピーしました