具体性を大切に書く / 正確に書く
辰濃和男 『文章のみがき方』 より

Reading Journal 2nd

『文章のみがき方』 辰濃和男 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

II さあ、書こう 10 具体性を大切に書く

「文章を書く者は、砂上の楼閣を恐れなければならぬ。目立たない些細なこと、微小なことはいい加減にしておいて、遠大も深遠もありはしない。具体的な事や物の確かさを土台にしていない抽象に、説得力が伴わないのは当然であろう」(竹内寛子)(抜粋)

竹内寛子は、微小なことをいい加減にするな、そういう確かなことの積み重ねこそ大切なのだと言っている。この後、著者は、竹内寛子の文章を例にして、具体的に解説している。

そして著者は、具体的な描写を積み重ねる文章の練習として、

  1. 私の得意料理
  2. ある駅から、ある目的地までの道筋を詳しく、わかりやすく、楽しく説明する。
  3. 野山を歩いたときに見た野草のことを詳しく書く。
  4. 今朝、新聞で読んだ心に残った記事の要約を書く。

などを勧めている。

そして、アメリカの絵本画家ターシャ・テューダーの本を手にするとして、テューダーの絵の魅力が、具体的なことを積み重ねていることにあるとしている。


冒頭の竹内寛子の言葉!いいですよね。ここでは文章だけど、いろいろなこと全般に、だいぶ立派なことを言うんだけど、よくよく見ると、細かい部分が全然なってなくって・・・・・何言ってんだ??みたいな人が多いですよね(つくジー)


関連図書:
竹内寛子(著)「あとがき」『野上弥生子随筆集』、岩波書店(岩波新書)、1995年
竹内寛子(著)『蘭・竹内寛子自選短編集』、集英社(集英社文庫)、2005年
ターシャ・テューダー(著)『思うとおりに歩めばいいのよ』、メディアファクトリー、2002年

II さあ、書こう 11 正確に書く

「自分の文章に対して、自分ができることは、僅かにその自分の文章を、それなりにより正確にすることぐらいであろうか。正確にすることぐらいと言ったが、これはこれでたいへん難しい。生涯の仕事である」(井上 靖)(抜粋)

不正確な文章を生む要因として、とくに怖いのは、先入観、固定観念、思い込み、偏見などによる間違いである。そして、先入観は、私たちの暮らしの中に巣くっているため、文章を書くということは、自分の中の思い込みや先入観をあばくことでもある。

思い込みや偏見をあばき、ひたすら正確な文章を書くのは、これこそ「生涯の仕事」なのです。(抜粋)

そして、われわれは本質のよさ、よりも見栄えの悪さにこだわる傾向がある。そのため正確な文章を書くには、本質を見極める目も必要である。

著者は、私たちは自分のもつ情報に反する情報は、「間違い」と決めつける強い思いこみがあり、そういう思考回路は正確性の敵であると言っている。さらに最近の○×テストはそのような傾向を助長するとして注意している。

〇×試験に慣れた子は、人の心の複雑な思いを一つにしぼって、ほかの感情を切り捨ててしまう、ということに慣れてくるのではないか。そんな不安が胸をかすめます。
・・・・中略・・・・・
正確な文章を志す以上、人の心の奥にある複雑なものを複雑なままに見極める努力がなくてはなりません。正確な文章に近づく道は険しいのです。(抜粋)

関連図書:
井上靖(著)「『百物語』その他」、週刊朝日編、『私の文章修行』、1979年
河野与一(編訳)『イソップのお話』、岩波書店(岩波少年文庫)、1955年

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