「星の王子とわたし」 内藤 濯 著
[Reading Journal 1st:再掲載]
(初出:2007-02-07)
星の王子周辺 砂漠愛
砂漠が子供を題材にした作の場面となることは少ないが、サン・テグジュぺリは、星の王子をサハラ砂漠に連れて行った。それは、彼の砂漠愛の感情からである。
サン・テグジュぺリにとって砂漠の演じた役割は大きい。何よりも、モロッコ西南の突端カップ・ジュピイでの一年半にわたる廠舎生活の体験が彼の砂漠愛の元になる。
「おかあさん、ぼくはどうしたことか、修道者めいた生活をしているんです。・・・・・砂漠に面した砦、ぼくたちの廠舎は、そうした砦を背にしていて、なん百キロのあいだ、砂原のほか何ひとつありません・・・・・。おかあさん聞いてください。あなたは、たいそう仕合せな伜をおもちです。そしてその伜は、自分の行くべき道をたしかに発見したのです」
自分の行くべき道を発見したといっても、そこはもはやサン・モーリスの館のことでもなければ、フリーブルの中学校のことでもなくて、サハラ砂漠の目ぼしい物ただ一つ無い廠舎のことだった。事実そこには、板づくりのベッドと洗面器と、水差しと、それに一台のタイプライターと、航空機発着所の書類があるきりだった。(抜粋)

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