地位、肩書、役割(前半)
エドガー・H・シャイン 『問いかける技術』より

Reading Journal 2nd

『問いかける技術』 エドガー・H・シャイン 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第5章 地位、肩書、役割 人々の行動をためらわせる「境界」の存在(前半)

今日から「第5章 地位、肩書、役割』に入る。ここで著者は、「自由に問いかける」を阻むものの考察として、地位や肩書、役割といったものにまつわるルールを考察している。

第5章は“前半”と“後半”に分けてまとめるとする。それでは読み始めよう。


他者とどのように関わるかは、状況という視点で考えるとわかりやすい。(抜粋)

どのような文化でも幼少のころよりその文化にふさわしいその場その場でのふるまい方を学び、そのルールに適応していく。そしてそのルールは意識するまでもない状態にまで、自分たちの日常に溶け込んでいる。

しかし、いざ地位や肩書が異なる人々がその場に集まると、そのことが顕著になる。

地位や肩書

著者は、地位や肩書が異なる人同士の行動に見られるルールを考察することが「謙虚に問いかける」を阻むものを理解の助けになるとしている。

部下と上司の間のルールを考えると

  • 部下は上位者を立てること
  • 上司は地位にふさわしい振る舞い

がルールとなっている。(このようなルールは文化異なれば異なる可能性がある)

それは、当たり前の話であるが、もしその期待が裏切れる場合、人々は、不安になったり、怒りを覚えたりする

新しい状況で誰かと知り合う場合は、私たちは、地位や立場を明確に示すサインを探し、見極める必要がある。そのため「謙虚に問いかける」という姿勢で会話に臨む。

また、会話を始める段階で相手との地位や身分の差がわかっている場合、どのような方法で「謙虚に問いかける」のがふさわしいかは、状況に応じたルールによって決まる。

相互に支えながら仕事をする傾向が強くなる未来を見据えると、私たちがこれから学ぶべきことは、まさしく地位的に差がある人どうしが支え合っているときに、その溝をどうやって埋めるかということである。(抜粋)

部下が上司に助けを求めることは、簡単である。しかし、上司が部下に助けを求める場合、心の葛藤があり、その葛藤にどのように向き合うかがわかるためには、役割によって決まる相手との距離感による。そのためそのような距離感について様々なタイプを見ていくことが必要である。

役割関係のタイプ

ここから著者は役割関係のタイプについて考察する。

まず、状況に応じたルールは、その場の人々の相対的な地位できまる。その状況で重要なのは、それぞれの役割によって決まる相手との関係とそこに集まった目的である(例えば、職場での上司と部下、お店での客と店員)。

社会学では、人間関係について、様々な分類の方法論が提案されている。ここで「謙虚に問いかける」を理解するためには、用具的関係と表出的関係の区別が役に立つ。この二つを著者は「課題志向の関係」「人間思考の関係」と呼んでいる。

  • 用具的関係(「課題志向の関係」):一方が他方に得たいものが明らかにある場合
  • 表出的関係(「人間思考の関係」):関係者の一方または両方が好感をもち、相手との付き合いを深めたいという個人的なニーズによる場合

そして、米国の文化は、「課題志向の関係」に傾いている。そのため個人的関係が排除され、感情的に中立となり、その場の人々の立場は、互いの依存度により決まる。

「人間志向の関係」では、どちらか一方、もしくは両方が好意を持つため、もっと感情が入り込んでくる

これらの関係で何が適切で何が適切でないかは、その社会の文化のルールにより決まる。

ここで著者は、一つの大きな疑問が生じるとしている。

ますます仕事の複雑さが増し、文化的多様性が広がっていく昨今、従来のように地位や立場によって人と人の間に境界が定められるというやり方を維持していけるだろうか。あるいは、仕事で人間関係を築くためには、ビジネスの相手や同僚となんらかの個人的な関りを持つことが求められるようになるだろうか。(抜粋)

人間関係を考える上では、「課題志向」と「人間志向」を両端とする連続体として見るとわかりやすい。相互に依存しあう関係をうまくやっていくためには、現在、課題志向側に寄っている人間関係を、何らかの形で個人的な関りを持つことがカギになるだろうか。そして、そのときに「謙虚に問いかける」をどのように役立てることができるだろうか。

個人的なつながりを持つというのは、相手を役職だけで判断するのではなく、一人の人間として認めるというプロセスである。(抜粋)

そのようなプロセスを考えると「謙虚に問いかける」は、相手との個人的なつながりを持つことを含んでいる。なぜならば「謙虚に問いかける」は相手に対して興味や関心を抱くことを基本とするからである。

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