『ストレスの話 メカニズムと対処法』 福間 詳 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第Ⅰ部 ストレスとは何か 第3章 うつ病とストレス障害
今日から第3章である。これまで第1章で「ストレス」、第2章で「ストレス障害とPTSD」を取り扱った。第3章では、うつ病、特にストレス障害によるうつ状態との違いについて解説される。ここの部分は本書の特徴であるように思う。
一般には、「人は強いストレスや持続的なストレスに晒されると、うつ病になってしまう」と考えられているが、著者は「ストレス障害によるうつ状態」と「うつ病によるうつ状態」は似ているが、この両者は切り離して考える方がよいといっている。なぜならば、両者で「発現のしかた」「病状の経過」「予後」「治療のあり方」に違いがあるからである。
ここで、著者は「ストレス障害によるうつ状態」と「うつ病によるうつ状態」を似通った仮想ケースを用いてわかりやすく解説している。
ストレス障害とうつ病を比べた場合、まずストレス障害の場合は障害を起こしたストレス要因はほぼ本人の判断する要因と同じであるが、うつ病の場合は、自分なりに原因を分析するが、もともと原因となる事象が無いため、ますます混乱してしまう。
(内因性)うつ病は、平均三カ月程度の波(病相)で自然と回復する病気でその原因はまだ解明されていない。うつ病は「うつという波」があり、病気の期間(病相)のはじめと終わりがある「病気」である。
一般にうつ病の発生率は人口の2~3%と言われるが、それらの大半はストレス障害であり、実際には純粋なうつ病はもっと少い、現代ではうつ状態の主たる症状とするストレス障害が圧倒的に多いと推測される。
ここから、うつ病の症状についての解説となる。
うつ病の症状には、「欲動の障害」「抑制症状」「思考様式・判断力の変化」「リズム障害」がある。
欲動の障害
人間には、「性欲、食欲、睡眠欲、行動欲、生命欲」の五つの欲動がある。うつ病では欲動の障害に注意を要する。起床困難などの睡眠障害はうつ病の前駆症状としてまた病期を通じて認められる。行動欲も抑制され、この障害は「疲れやすさ」「何もしたくない」などの形で現れる。自殺願望も生命欲の障害捉えられ、実際に自殺の準備をするなどの「死に対する本気」は一定の閾値を越えた病的な症状と判断される。
抑制症状
うつ病における抑うつは、単に「心配していることがある状態」と明らかに異なり、「動機のない非哀感と主として思考、行動の制止」というものである。これらは、精神と肉体と密接に関わっていて、
- 思考の抑制:判断力の低下、優先順位がつけられない、同じ事ばかり考えてしまう
- 筋肉の抑制:表情筋のゆるみ(表情が乏しい)、緩慢な動作、疲労感、脱力感、声が小さい
- 胃腸の抑制:食欲低下、便秘、口渇
などの抑制症状がある。
リズム障害
うつ病には以下のようなリズムとサイクルがある。
- 病相としての波:うつ病は「波」があり、この波は個人ごとに特徴がある。そして、ストレス障害と違い症状が比較的緩やかに出現することがある。
- 季節変動・日内変動:うつ病の中には季節と相関が認められるケースがある。また比較的「日内変動」があり、体内時計のずれが六時か程度生じることが多い。
最後に、うつ病とストレス障害の違いに関して以下のようにまとめている。
うつ病とストレス障害の違いが少し理解できたでしょうか。ストレス障害とうつ病ではその経過も異なっています。よくいわれるに「うつ病は一定の期間が過ぎれば勝手によくなる病気」です。それに対して、ストレス障害は病気というより怪我に近い状態で、ある程度症状が強い場合はほったらかしにしていてはよくなりません。その意味では、ストレス障害のほうがうつ病よりも恐ろしいといえるかもしれません。最後に、うつ病は「治療を行う必要のある病気」、ストレス障害は「ストレスをうまくコントロールしなくてはならない障害」という発想を持つことが極めて大切であることを進言したいと思います。(抜粋)
以前に『ネガティブ・マインド』という本を読んだ。その本では、うつ状態とくい「軽い」うつ状態の仕組みと予防について書かれていたが、そこではここでいう「うつ病」と「ストレス障害によるうつ」状態を区別していなかった(ココ参照)。しかし、『ネガティブ・マインド』でのうつ状態は、ここでいうストレス障害のうつ状態なのだと思った。
(ちなみに、『ネガティブ・マインド』では、「うつ病」とは何かについては、本書の範囲を超えるとして割愛されていて、野村総一郎の『うつ病の真実』日本評論社を勧めている)
確かに普通に病気であるうつ病とストレスにさらされてのうつ状態は、別に考えないと治療に当たっては間違った方向になってしまう。そこをちゃんと区別しているのはこの本の特徴だと思った。でも、一般書では区別しなくって良いほどうつ病よりストレス障害によるうつ状態のが多いってことも事実なのかな?、現代はストレス社会なんだなぁ~、と思った。(つくジー)
関連図書:
坂本真士(著)『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 央公論新社(中公新書)、2019年
野村総一郎(著)『うつ病の真実』、日本評論社、2008年
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