ストレス反応とストレッサー、不安(後半)
福間詳『ストレスの話』より

Reading Journal 2nd

『ストレスの話 メカニズムと対処法』 福間 詳 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第Ⅰ部 ストレスとは何か   第1章 ストレス反応とストレッサー、不安(後半)

今日のところは第1章ストレス反応とストレッサー、不安」の後半、前半に引き続きストレスの話である。後半では、特異なストレッサーである「不安」について解説される。


「怒り」「恐怖」「悲哀」などのストレッサーは突発的に発生し、比較的短時間で終息する普遍的な感情である。しかし「不安」はこれらに比べて特殊である。まず「不安」は、対象となる実態がない。つまり「不安」は自分の脳の中で作り出した感情で特定のストレッサーが無くても引き起こされる。また、不安はその人の思考様式と密接に関係するため、人によって強弱が大きい。
不安は一般に「予期不安」と呼ばれ、「実際に現在体験していない事柄に対し、自分が過去に体験した恐怖や不安を想起して重な合わせ不安を覚えてしまうこと」である。

ここでは、この「不安」について思考様式との関連から考える。

結果追求型思考とプロセス型思考

不安を抱く人の思考の共通点として「結果追求型思考」、つまり「いくら考えても決して答えの出ない疑問、実態のない模索などを延々と考える」ような状態になっている。このような状態では不安を覚える。
このような状態にならないためには、「プロセス追及型思考」をすることが大切である。「プロセス型思考」とは「疑問を覚えたときに、具体的な対応策を考えるというプロセスを検討」するような思考である。

「そうなったら嫌だ、困る」「こうなってほしい」などと結果のみに着目するのではなく「そうならないために、また、こうするために自分は何をするべきか」を考察することです。(抜粋)

ストレス対策においては、戦術的思考が重要であり、そのためには闘いの四要素である「我(自分)」「敵(ストレス)」「時間」「空間(置かれた状況)」を一定の思考の下で考察することである。

ある難問にぶつかった場合

  1. 問題にどのような形で対処するかという目的を明確にする
  2. 四つの要素それぞれを分析し、自分のとるべき行動方針を継続的に列記する
  3. 自分の行動方針にたいして、敵(ストレス)がどのように降りかかるか(敵の可能性行動)を想定する
  4. その結果どのような行動方針が最適であるかを比較分析する

このようなシミュレーションは、プロセス思考に他ならない。

不安神経症(全般性不安障害)

不安神経症(全般性不安障害)は、以下のようなものである。

  1. 特にこれといった理由もなく何かにつけて心配になり、また理由があったとしてもその理由に見合わないような心の動揺をきたす状態
  2. その状態はだらだらと長時間にわたり消長を繰返す
  3. さらにこの不安によりさまざまな精神症状や身体的症状が引き起こされる。
    • A.精神症状:過敏、緊張、落ち着きのなさ、不眠、イライラ、集中困難など
    • B.筋肉の緊張、首や肩のこり、頭痛・頭重、震え、動悸、息苦しさ、めまい、頻尿、下痢、疲れやすさ

このような不安神経症(全般性不安障害)は、神経的なショックやストレスが原因になっていることが多いが、まったく心理的な出来事(インシデント)が無いこともある。

最近急激に増加している不安障害に「パニック障害」がある。
パニック障害は、発作性、反復性に起きる重篤な不安発作で、動悸、呼吸苦、現実感の喪失などの精神症状を伴う。これも、ストレス、過労の蓄積、睡眠不足、風邪、体力低下、生理周期などの悪条件がきっかけで発症する。

不安神経症やパニック障害を、日常生活上のストレスによるストレス反応の連続の結果と考えると、次のような仮説が浮かびます。ストレスに晒されると結果追求型の思考様式になりやすく、その結果として不安感を引き起こし、さらにその不安感を継続することで、ストレス反応が起きるという一連の流れです。(抜粋)

マイナス思考

「心配性」「将来に起こるかもしれない事象に対するネガティブな捉え方」であるのに対して、「マイナス思考」「過去の自分が体験した事象に対するネガティブな捉え方」のことである。

ストレスが加わった状態で結果追求型思考に陥るとマイナス思考に偏る傾向がある。ストレス反応はマイナス刺激に対する反応なので、ストレスがかかっている状態ででは、マイナス刺激に「敏」、プラス刺激に「鈍」となりどうしても、ネガティブ事象や思考に関心が集中し、感情はより敏感で繊細になる。

マイナス思考の状況では、何とか現状を打破するか、さもなければ自分が消え去るかの、究極の二者択一的思考が発生することもある。このような精神状態を「精神的視野狭窄」と呼ばれる。

また、生活上のストレスで、自傷行動や過食・拒食に走りやすいタイプの人は、自尊心や自己評価が低いといわれている。彼らの多くが成育歴でDVなどの辛い体験をした人で、成育歴に伴う長年のストレスで逃避行動の習慣化、自己否定的思考の形成がなされている。自分の良い面に関しては目をつぶっていて、BPD(境界型人格障害)となりやすい。

ここからストレス反応の良い面と悪い面のバランスの話に移る。
ストレス反応は、本来人間が生きていくために必要な反応でもある。ストレスがかかった状態で、本人の能力が増すこと場合(善玉ストレス)がある。しかし同じストレスでも強度が一定以上となると反対にストレスに負けてしまう(悪玉ストレス)。

ある刺激の強さが度を超すと弊害になり(悪玉ストレス)、適度な強さであれば、効果的な結果を引き起こす(善玉ストレス)という意味です。(抜粋)

ストレスとうまく付き合うためには、善玉ストレスに対す認識が必要である。

善玉ストレスでは、

  1. 負荷をかける程度の見極め
  2. 愛情と期待感に伴う負荷
  3. 負荷を受ける側の信頼感

が絶対条件である。

このように、私たちは通常の生活においてもさまざまな刺激を限りなく受けているのです。あらゆる刺激に対して、脳はストレス反応を起こしています。ストレス反応の大部分は時間とともに平常の状態に戻ります。しかし、ごく一部の反応が長時間継続したり、過剰に強く反応したりする場合に、自然に回復することなく障害に発展することがあります。そのような状態がストレス障害です。(抜粋)

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