ストレスに打ち勝つために
福間詳『ストレスの話』より

Reading Journal 2nd

『ストレスの話 メカニズムと対処法』 福間 詳 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第II部 ストレスにどう対処するか   第6章 自分の脳をいかにコントロールするか   四.ストレスに打ち勝つために

いよいよ、本書の最終章の最終節第6章4節である。ここでは、本書全体を通してのまとめとして、ストレスに勝つための指針が述べられている。ここまでもそうであったが、著者のやさしい語り口もあり、市民講座を聞いているように楽に読み進められ、その要点が無理なく理解できるように書かれている。


モチベーションの維持

仕事や育児、勉強など、私たちの生活場面では、楽なことばかりではない。そして、著者はこれを苦痛に感じる人と、頑張って続けられる人の違いは、モチベーションの違いがあるとしている。苦しいことに立ち向かうエネルギーをもらうためにはモチベーションの保持が必要である。このモチベーションを保持するためには、

  1. 目標設定と情報
    何かの行動を起こすためには目標が必要で、目標を設定するためにはタイムスパンの設定が必要である。一年後、三年後、十年後のイメージを持つことにより現在を意味づけ方向性を持って考えることが必要である。また目標を設定するためには、受け入れる結果の許容範囲に幅を持たせ、Best(最良)、Welcome(許容)、Least(必要最小限)の三段階くらいの設定が必要である。Must(絶対)の設定は、しない方がよい。またこの目標設定は継続的に見直す必要がある。
  2. 適正な評価と裁量権
    自分の行動の結果に適正な評価があると励みになる。反対に不当に低い評価や評価の欠落は失望につながる。また自分に裁量権があることは、自分の存在感を意識することになる。

を考慮する必要がある。

リズムのある生活

リズムのある生活とは、一定の期間のとるべき行動がある程度、予測でき、睡眠と覚醒、仕事と休みのバランスが保たれた生活をいう。このような生活は健康にも良いとされ、疲労防止にもなる。逆につねに不測の事態に備えなければならないリズムのない状態では、精神的なテンションのバランスが悪くなる。

しかしうつ病やストレス障害の場合はこのリズムが乱れ、精神的にも肉体的にもいっそう疲労感がます。うつ病やストレス障害の治療の過程である程度症状改善が認められた時、規則的な生活を送ることは非常に重要である。

メリハリをつける

生活のメリハリをつけることは、リズムをつけるのと同時に生活がマンネリ化しないように変化をつけるという意味がある。変化がないと新たな発想や気づきがなく、単調さはそれ自体がストレッサーとなる。生活にわずかなスパイスを加えることで生活にメリハリを加えて楽しむことが大切である。

テンションの保持

テンションの保持とは戦う気持ちの保持の事である。攻撃と防御では異なったストレスを生み出すが、防御においては、特に危険がある場合は強い緊張感が生まれ受動的になる。攻撃の場合は、リスクが大きい場合でも、活動的になり不安や緊張から注意をそらすことができる。テンションの保持は闘ううえで最大の「矛」になり、高いモチベーションがあれば、テンションを保持したままで闘える。

モードの切り替え

テンションが一度下がると上げることはなかなか難しい。そこで大切なのがモードの切り替えである。このモードは二つ以上持つべきで、まずは、仕事モードとプライベートモードの二つをうまく行き来することで、テンションの保持が可能になる。会社を出たら仕事モードはおしまい、終末はプライベートモードを目いっぱい楽しむなどが、有効である。
また、育児などでモードの切り替えを行うことが困難な場合には、著者は、読書をすることを進めている。5分10分という時間でも小説の世界に浸るとそれがモードの切り替えになる。

疲労を感じることの意味

疲労は一般的には好ましくないことと捉えられる。この疲労感は「肉体的」なものと「精神的」なものが混ざり合っているものである。この疲労は日常生活で特定の臓器を酷使することによる黄色信号であり、精神的(脳機能)にも肉体的にも危険であるという黄色信号である。

不快な疲労と心地よい疲労

また疲労には「不快な疲労」と「心地よい疲労」という切り口もある。不快な疲労の特徴は

  1. 疲労が回復することなく蓄積する場合
  2. 同様な偏った刺激の反復
  3. 疲労を引き起こす行動で達成感や満足感が得られること

などである。不快な疲労には受動的要素が強く、心地よい疲労は能動的要素が多いともいえる。一週間で嫌な仕事で悪玉の疲労を感じ、休日はしっかり遊んで善玉の疲労を感じる。同じ疲労でも二つの疲労感が相殺されるようにすることが大切である。

遊びのすすめ

人間の脳は複雑な機能をもっているが、脳も同じ部分だけを使うと疲れやすくなる。そのためバランスよく脳を使うことが大切である。そのために、有効なのが遊びもしくは趣味である。ここで「遊び」についていくつかのトピックスにまとめている。

  1. 遊びとは
    遊びを定義するのは難しいが、著者は「小さな喜び、感動をえること」としている。そして、それは趣味ともつながっている。
  2. 生活に余白をつくる
    遊びは、利得目的でないため非生産的である。しかしあえて無駄なことを行うことが大切である。生活にあえて余白を作ることで逆に自分の仕事や生活の姿がみえてくる。
  3. 自分で考える・非日常的刺激・自己肯定
    仕事では自分の裁量権が少ないことが多いが、遊びはすべて自分の裁量権のもとで行われる。そして遊びは「非日常的」ということも大切である。遊びは非日常的な刺激によるストレス反応の効力があり、「快」感情につながる。そしてそのような行為は自己肯定感にもつながる。
  4. 脳のリセット
    一日家族旅行をしたときなどは、その日を振り返ることが容易にできる。このような記憶に残すことができる思考様式は、プロセス思考である。遊びの効力は物事をプロセス思考の効力ともいえる。

[全14回完了]

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