『ストレスの話 メカニズムと対処法』 福間 詳 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第II部 ストレスにどう対処するか 第5章 どのように診察するか
今日のところから「第Ⅱ部 ストレスにどう対処するか」が始まる。「第Ⅰ部 ストレスとは何か」でストレス、ストレス障害やPTSD、さらにストレス障害とうつ病との違いが解説された。そして「事例紹介 ストレス障害発祥のきっかけ」で様々な事例の紹介あり、第II部となる。第II部では、ストレスにどう対処するかという話が展開される。がある。
まず今日のところは、実際の診察・治療はどのように行われるかについて、事例紹介の最初の例(パワハラ)のS・Tさんの例を通して解説される。
初診時のやり取り
ここではまず、初診時の診療のやり取りの例を具体的に示される。初診では、一つ一つの情報を積み重ねて、発症までのシナリオを描く作業から始まる。精神的な理由から、出勤困難になった場合(S・Tさんの例)では、統合失調症を含めてさまざまな精神病状態があるが、大半はうつ病とストレス障害である。そして、両者の比率は一対九くらいでストレス障害が多い。ストレス障害やうつ病では、自分の問題点をうまく説明できないことが大半であるため、事実関係を確認して問題点を明なにする作業が必要である。
問診票
著者のクリニックでは、受診前に問診票をダウンロードして質問に記入してもらうようにしている。しかし、症状の強い人はこの問診票に記載できない人も多い。
ストレスがかかると、マイナス思考に偏りがちになり、視野が狭窄するということは前述しました。つまり思考の対象となるものがどんどんと狭くなり、堂々めぐりの思考になってしまうわけです。ストレスが強く加わると、現時点での問題点に関心が集中し、時系列で物事を考えたり分析したりすることが困難になっているため、全体が見えなくなってしまうことがあります。このため、クリニックを訪れる時点では自分自身の問題点の解決のシナリオを作成できなくなった状態になっているのです。(抜粋)
ストレス障害をはじめとするメンタルの問題は環境要因などに左右されるため、症状の緩和にとどまらず、症状による社会のハンディキャップなどにどのように対処するのか、作戦のシナリオを作成することになる。そのため、職務環境、家庭環境、経済的環境などの情報も必要になる。
病状の説明
病状の説明では、発病までのシナリオを確認後に、今後の対応を含めての説明となる。ストレス障害は反応であり、うつ病のような疾病でないこと、職場環境の調整が必要なこと、休職が必要なこと(S・Tさんの場合)、必ず回復し復帰できること、などが主な説明項目である。
休職期間の過ごし方
ここから、業務上のストレスで休職せざるを得ない場合、復職を前提とした休職期間の過ごし方について書かれている
- 休むのではなくリハビリの意識
休職の場合、平均二から三カ月の長期間となる。休職期間の注意事項としては、
①社員としての自尊心を保持する
②復職に対する気持ちを維持する
③体力の低下を防止する
④コミュニケーション環境を維持する
⑤職務感を失わない
などがある。挫折感を持たせないことが大切であり、なるべく早く会社と連携を取りつつ社員としてのプライドを失わないように努力する。 - テンション保持と運動・読書
復職に対する気持を維持するためには、緩まないことが大切である。出勤時刻のタイムスケジュールにあった起床時間と入眠時間の維持が必要である。また、二ヵ月近く自宅で過ごすと、想像以上に体力が落ちるため、一日一時間程度のウォーキングや軽いジョギングが必要である。また、著者は休職中の過ごし方として読書を進めている。
休職中は復帰に対する強い気持ちを保持して、体を動かし体力管理をしつつ読書やコミュニケーションを通じてしっかりと脳を動かしていることが大切なのです。(抜粋)
- 復帰へのプロセス
復帰する日程は、できれば三~四週間前から決めることが必要である。一週間前位からは通勤練習として定刻出勤をして会社まで模擬通勤をすることも意味がある。復職時はほぼ全員が不安を感じている。最後には気合で乗り切るしかない。また、復帰後三日目と三週間目の一週間、そして三カ月目の一ヵ月間はリスクが高い時期となる。 - うつ病の場合は異なる
ここまではストレス障害の例であったが、うつ病の場合は異なる。うつ病の場合はある程度うつ症状が回復してから徐々に生活リズムを立て直すことが必要である。またうつ病の場合は職務環境の問題ではないので、病気が良くなれば、問題なく復帰できる。
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