週刊現代2026.02.16
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
レイ・ダリオ寄稿 「日本と日本人が生き残る道 中国・円安・株」(前半)
Webで週刊現代の記事を読んでいたら、気になった記事があった。レイ・ダリオの寄稿である。さらっと読んでみると、現在の円安は構造的で、しばらくはこの傾向が続く、とか、投資は資産を増やす手段ではなく、資産を守る手段になる、とか、先日読んだ「お金を増やす秘密の習慣」 為替編(PRESIDENT 2025.12.19)と同じような見方をしている。なるほど、そういう方向がやはり妥当な線なんだな、と思った。
スマホだと、なんだか読みづらいので、元記事が載っている週刊現代2026年2月16日号を買ってみた。記事は6つのQuestionにレイ・ダリオが答える形で構成されている。Questionを3つずつ”前半“と”後半”に分けてまとめることにする。それでは読み始めよう。
Question 1 日本は中国と「対決」するべきですか?
日本が本当に問われているのは、中国と対立するか否かではなく、「管理できない立場」に追い込まれることである。中国が経済力・軍事力共に拡大する一方、日本は相対的な国力が伸び悩んでいる。軍事面では、日米同盟はあるものの自力で緊張の拡大を制御できる余地は大きくない。経済面でも、中国は露骨な制裁措置を取らなくても影響力を行使できる立場にあり、日本企業が政治的リスクのため対中投資や研究協力を控えると中国市場だけでなく、グローバルでの日本の競争力も低下する。
問題は、急激な事態悪化ではなく気づかないうちに不利な立場へ追い込まれることである。長期的な対立は、外交の選択肢を狭める。かつては「米中間の調整役」「東アジアの安定装置」としての役割が失われれば、日本抜きで物事が決まる場面が増えてくる。国内的にも長期的な対立は、軍事費などのコストを高め、教育、科学技術、少子化などの分野を圧迫する。
こうした状況を考えると問題は、対立そのものではなく、戦略の柔軟性を失うことである。
必要なのは、備えを最大化しつつ、刺激を最小化い、逃げ道を残すという「中間戦略」です。(抜粋)
「抑止力の強化」と「発信の管理」の分離が大切である。首脳は閣僚レベルでの挑発的な発言は避け、台湾問題も多国間の枠組みで「国際公共財」として位置づける。日本は先頭に立つのではなく、つねに調整役にまわり対日圧力を分散する。経済面でも「脱中国」になるのではなく、依存度を低くする「分散戦略」が現実的である。そして、政治レベル、経済レベルでの対話ルートを絶対に切らないことも必要で、成果が乏しくとも首脳会談なども継続することが望ましい。
日本は独自の語りをもつ必要がある。日本の文脈に根差した言葉で秩序を語ることである。このような「中間戦略」は地味で、短期的な喝采は得にくい、しかし
日本に必要なのは、拍手喝采を浴びる外交ではなく、事故を起こさない外交だと思います。(抜粋)
Question 2 未曽有の円安を耐える術はありますか?
現在日本の円安は、日本経済が長年抱えて来た構造的な課題が、通貨価値下落というかたちで顕在化しした結果である。米欧は高金利という負担を受け入れながら、経済の再構成を図ったが、日本は低金利の継続前提の政策運営から抜け出していない。この差が円に対する信認度の低下として表れている。円安を是正する方法はあるが、いずれも痛みを伴う。政治がはっきりした説明避けているため不透明感が広がっている。そして円安が長期化すれば、そのコストは確実に国内化される。
この状況下で重要なのは、「いずれ円の価値は戻る」という希望的観測に依存しないことです。(抜粋)
円安社会では、現金として円を保有していると価値は必ず下がる。そのため、防衛的対応が必要となる。「何もしない」こと自体がリスクである。
- 円安の影響を受けやすい分野を把握する:食料、エネルギー、輸入品などへの依存度を減らす。特に固定費を抑制する。
- 円資産への集中を避ける:資産は円、外貨に連動する資産、実物資産などを組み合わせる。
- 人的資産への投資:外貨で評価されるスキル、国際的な業務経験、専門性と語学力の組み合わせは円安局面では相対的に価値を持つ。
- 借入金による投資、短期的利益を狙った取引を避ける
円安の時代において最も警戒すべきは、経済的損失のもの以上に、無力感や分断が社会に広がることです。(抜粋)
円安は、その変化への対応力が問われる局面である。そして守るべきは、通貨ではなく国民一人ひとりの生活基盤であり、購買力である。
特筆したいのは60歳以上の人のことである。高齢者は「失敗を取り返せる時間が限られている」、そして、「精神的な安定が、そのまま生活の質に直結」する。そのためシニアに必要なのは、リスクを最小にし「安全に耐える」ことである。資産配分の基本は守ることであり、現金、預金を4~5割ほど確保し、3割程度を外貨と連動する資産に振り分け、その残りを低リスクの実物資産で補うようにするのがよい。
「大きく増やさない代わりに、大きく減らさない」ことを意識するのが重要である。(抜粋)
外貨資産についても外貨貯金のような直接的方法よりも間接的な保有が安全である。目的は値上がり益でなく、円安時の購買力を維持するためである。家計の「円安対策」・国産品の比率を上げる、エネルギー、保険などの節約も必要である。
シニアの円安対策は「勝つため」でなく、最後まで安心して暮らすための戦略なのです。(抜粋)
Question 3 「日本版トラス・ショック」は起きますか?
英国では、減税政策によって通貨・国債・株が「トリプル安」となるトラス・ショックが起きたが、日本は同じような構造を持っているが、決定的に違うところもある。
そのため、日本版トラス・ショックは「起きにくい」が、ひとたび起きた場合の回復は英国よりも遅く、困難になる(抜粋)
トラス・ショックとの
- 共通点:政府の巨額債務、成長なき減税や給付、中央銀行の独立性への疑念、通貨安がインフレとなる構造
- 相違点:日本国債の大半が国内で保有され、家計部門は依然として純金融資産超過の状態にあること
この相違点のため、日銀が事実上の国債の最後の買い手となり、金融パニックを押さえる緩衝材となっている。しかし、この緩衝材が「ショックなき長期衰退」という別の危機へ導く可能性がある。
日本は金融政策の選択肢を見ても袋小路に入っている。
- 金融緩和を続ける:輸入インフレにより実質賃金が下がる
- 金融緊縮をする:株価や不動産価格が下落し、中小企業の倒産が増え経済より先に政権が倒れる
ここで重要なのは、金融政策そのものではなく、「順序」と「語り方」です。(抜粋)
政府が金融緩和を主張せず日銀が技術的・段階的な正常化を説明することで、市場の信認をえる。重要なのは、政府が前に出るのではなく中央銀行を前に出すことである。同時に「量」ではなく「対象」を変える必要がある。国債買い入れ一辺倒をやめて、成長投資や人的資源へ資金を誘導する。
「緩和するか否か」ではなく、「何を延命し、何を終わらせるか」の選別こそが本質なのです。(抜粋)
財政も、「高齢者向け政策の実質的な調整」、「子育てや教育への予算集中」、「資産課税の拡大」などの再配分など「分散された痛み」が求められる。
「語り方」として、強いスローガンや理念を示すのではなく、「整合性」を示すことが必要である。米欧の市場が重視しているのは、政策の一貫性と将来の予見可能性である。政府と日銀は役割分担と距離感を明確にし、金融政策と財政政策の順序、出口戦略についてビジョンを示すことが大切である。
通貨とインフレの対応も柔軟な姿勢で行い、必要に応じて調整する意思を示すことも必要である。
政策そのもの以上に、「無策でない」「放置しない」という姿勢を示せるかどうかが、国際的信頼を左右するということです。(抜粋)

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