「戦争拡大の理由」(その1)
加藤陽子『それでも日本人は「戦争」を選んだ』より

Reading Journal 2nd

『それでも日本人は「戦争」を選んだ』加藤 陽子著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

5章 太平洋戦争 戦争拡大の理由(前半)

一九三七年に始まった日中戦争は華中地域に飛び火し上海に到達した。中国軍は強く日本軍は苦戦する。この中国軍の強さは、その抗日意識のほかに、ドイツの武器供与(日本と三国同盟を結ぶ前、ドイツは中国に武器を売っていた)、ソ連との間の中ソ不可侵条約(武器の援助を含む)、それにイギリスとアメリカの武器援助があった。そして、アメリカは日本に対しては航空機とその部品の対日輸出禁止、日米通商航海条約の廃棄を通告し、日本に警告を与えた。

その後、日本は上海、武漢を陥落させて長江下流域、中流域まで支配を拡大させた。イギリスは中国が降伏するのを恐れ、中国に借款を行う。また、イギリスからの物資は、広州、香港、フランス領インドシナなどから援蒋(えんしょう)ルートを経由して送られた。

日本は、中国が降伏しないのは、英米ソが中国を援助しているからと考え、援蒋ルートを閉じてしまおうと考え、仏印(フランス領インドシナ)への進駐を計画した。

このころドイツはフランスを占領し傀儡政権のグィシー政権を作っていた。したかって日本が仏印に進駐しても交渉相手はグィシー政権でありその総督が認めたならば第三国に文句を言われる筋合いはないとの考えがあった。

日本が仏印に進駐した理由は、援蒋ルートを閉じることのほかに、東南アジアの資源の獲得があった。戦争がなかなか終わらない場合はその資源を南方に求める必要があったからである。


関連書:小谷賢(著)『日本軍のインテリジェンス』講談社(講談社選書メチエ)2007年

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