『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第3章 ネガティブ・マインドの仕組み―自己没入の中で起こること
3.2 気分一致効果
前節では、うつになりやすい認知の仕方を解説されていた。本節は反対に「うつ気分によって認知が影響を受ける」ことが解説される。
うつ気分とネガティブな認知が相互に循環的に作用してうつがひどくなっていくのである。(抜粋)
その例として「気分一致効果」を取り上げている。
「気分一致効果」とは、「特定の気分が生起すると、その気分のもつ評価的性質(ポジティブ対ネガティブ)に一致する記憶や判断、行動が促進される現象」のことである。
ここで、この「気分一致効果」を理解する為に、「感情のネットワーク理論」(感情に関連する事柄や経験はネットワークを作って記憶されているという説)を「不安」を例にして解説している。
まず感情に関連する要素はさまざまである。まず記憶(エピソード記憶)は、“時・場所”、“行為者”、”出来事“のような成分に分けられ、その時の感情も”概念“、”表出行動“、”自律神経系の反応“などに分けられる。ネットワーク理論とは、それらは、お互いに関連性を持ちながら(ネットワークを持ちながら)保持されているという説である。
ここで、「記憶」に関する説明の後に「長期記憶」のどのような内容が思い出されやすいかは、意識された事柄と関連性が強い事柄が意識に上りやすい(活性化されやすい)と説明される。
感情に関する記憶も同様のことが言える。互いに関連性の強いものがネットワークを作っているので、不安や落ち込みといったネガティブな感情を経験したときに、それとネットワークで結ばれている事柄は活性化されやすく、情報処理されやすい。(抜粋)
このように感情に関する記憶がネットワークを作っているために、落ち込んだ状態では、それとネットワークを作っている言葉や概念は活性化されやすくなり、また落ち込みという感情とネットワークを作っているエピソード記憶も活性化されやすくなる。
この影響は自己に注目するとますます強くなると思われる。自己に注目していると、活性化されるのは自分に関することである。したがって、落ち込みに関連する自己のエピソード記憶や自己概念が意識に上りやすいだろう。すると、気分一致効果のところでも述べたように、失敗した自分の過去の記憶など、落ち込みと関連する記憶は意識に上りやすいと考えられる。また、落ち込んだ気分で自己に注目すると、自己に関する意味記憶(例:自己概念)も活性化していると考えられる。(抜粋)
さらに、人は自己概念と不一致な情報より、一致する情報を処理しようとする傾向がある(詳しくは次節)。したがって、落ち込んでいるときは、無意識に「ダメな自分」を結論づける証拠を探し、さらに落ち込みを強める。
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