「効力感を育てるには」
波多野誼余夫 / 稲垣佳世子『無気力の心理学 改版』より

Reading Journal 2nd

『無気力の心理学 改版 : やりがいの条件』 波多野誼余夫/稲垣佳世子 著 
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第7章 効力感を育てるには

まえがきに書かれているように、第7章から第9章は「効力感を伸ばす」ことについて書かれている。第7章では「家庭教育」、第8章では「学校での教育」、さらに第9章では「効力感の社会的条件」についてあつかう。


今日のところは、効力感を伸ばすための家庭教育についてである。

家庭教育でまず考えるべきは無力感を獲得させないということであろう。(抜粋)

無力感を獲得させないためには、まず古典的な無力感を引き起こす経験(第2章)を減らすことである。つまり、子どもの身体的不快や生理的欠乏を訴えたら、大人が応答する必要がある。ここで大切なことは、

  • タイミング・・・子供の示す様々な信号を敏感にキャッチして素早く対応すること
  • 期待する仕方での応答・・・・子供は一人ずつ好みが違うのでその子にあった方法で応答すること
  • 丁寧過ぎないこと・・・幼児期以降に課題達成の援助を求められたら時、あまり完璧な解決策を与えず、まずヒントや方向付けにとどめ、子供に解決させる方がよい

である。

次に子供に無力感を獲得させないためには、失敗やちょっとした誤りに対して不適切な否定的な表現を取らないことが大切である。親が一種の親しみの表現としていった「悪口」でも子供が潜在的に能力に不安を持っていたり、劣等感を発達させていたりする場合には、問題となることがある。
最近の研究に、“子供が失敗した時に相手がおこると、これは自分の努力が足りなくって失敗したせいだと思い、相手が失敗を受け入れたり同情したりすると、その原因を能力不足のせいにする傾向が強くなる”というものがある。しかし失敗したときに叱るのはかなりの危険が伴う

達成感を得るには、単に“努力によって好ましい変化を引き起こすことができた”ということだけでは、足りない。しかし、著者は子供が真の効力感をえるための手助けは、それほど難しいと思わないといっている。

高等動物は本来、環境に能動的に働きかけ、みずからの有能さを伸ばそうとする傾向をもつ。管理社会から自由で、また無気力に汚染されていない子どもでは、この傾向はおおいにあてにできるからである。(抜粋)

子供は一つの課題を達成すると内発的により難しい課題に挑戦する。条件を整えて後は放っておいても熟達する。ここで、気をつけることは親がむしろこれにブレーキをかけないことである。
また、子供の生活にはさまざまな熟達のお手本がある。お手本は大事であるが、これを親が押し付けることは良くない。

ここで著者は、賞罰に頼らざるを得ない場面もあるとしながら、

親が注意しなければならないことといえば、何よりもまず賞罰によって子供の行動をコントロールしすぎないということであろう。(抜粋)

としている。そして、

親の関わり方は、子どもが次にやるべきことを指示したり、賞めたり叱ったりといった形でなく、むしろ子どもの活動や自己向上が促進されるように環境条件をととのえてやるとともに、子どもの内部にある知識や価値基準を明瞭化し、それが子どもの行動を導くものになる。(つまり、メタ認知が発達する)のを助けるという形で行われるべきであろう。(抜粋)

といっている。ここでそのポイントを二つ示している。

  • 子どもの行動へのフィードバックがなるべく大人からでなく、ほかの情報源から与えられるようにすること
  • 子どものイニシャティブあるいは自己選択の尊重

効力感を伸ばすためには、最終的には自分なりの選択基準、評価基準を作りあげる必要がある。そのために重要なこととして著者は、「子どもの内的な感覚を受けとめ、これを大切にする」ことであるといっている。

そのために、子どもがなすべき活動を決めるさいになるべく参加させることが重要である。しかし、子どもが一人で決めさせるわけにはいかないこともたくさんあり、その時には、子どもの思いつきは好みを十分聞いてあげ、その通りにできない理由を納得するまで説明することが必要である。

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