『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第1章 モチベーションとは何か (その3)
6 接近 ‐ 回避モデル
前回(「モチベーションとは何か」(その2))では、「プッシュ ‐ プル・モデル 」と「動因‐誘因モデルが解説された。今日のところはそれに引き続き「接近 ‐ 回避モデル」である。
6 接近 ‐ 回避モデル
誘因(ココ参照)には、「引く力」だけでなく「遠ざける力」を持つものがある(例えば、落第や罰金など)。これを負の誘因と言う。
われわれを取り囲む環境には、それに接近しようとする行動を引き起こす正の誘因と、それを回避したり、予防したりする行動(たとえば、落第を避けるために講義に出席する)を引き起こす負の誘因が存在し、われわれのモチベーションはその両方に左右される(抜粋)
また、同一の誘因であっても、人によってその作用は異なる。この誘因には、「強さ」という性質もある。この正負や強さといった誘因の性質は誘因性と呼ばれる。
モチベーションは、誘因(誘因性)と動因(欲求など)の相互作用によって生じる。
「接近 = 回避モデル」は、「近づく – 遠ざかる」という行動に注目してモチベーションを説明する。
この「接近 – 回避モデル」は、フロイトが提唱した「快楽原則」(=生命体は「快を求め、不快を避けるように動く」)に根差している。そして、モチベーションは、接近動機づけ(快を求める)と回避動機づけ(不快を避ける)の2種類に分けられる。
この「接近 – 回避モデル」は脳科学によっても裏付けられて、モチベーションの大原則となっている。
やる気や意欲と言ったモチベーション場合は、目標に近づく行動であるため、一般には、接近動機を指すが、実際には接近動機だけで説明できない現象が多い。実際のモチベーションは接近動機と回避動機が混在しているのである。
ポイントは、実際の行動は接近と回避の合力で決まるという点だろう。(抜粋)
実際のモチベーションは、エネルギー性と方向性、動因と誘因、接近 – 回避といった諸要素のダイナミズム(力学)によって決まって来るのである。(抜粋)
「接近 – 回避モデル」は、快・不快によって行動が規定されると説明するが、ここで何が快で、何が不快なのかは単純ではない。
我々の感情は、快・不快の2種類だけでなく、多種多様で複雑である。そしてそれは階層構造をもち、かつ感情によって活性度(覚醒)[ = 感情のエネルギーの強さ]に違いがある。感情はモチベーションと深い関係があり、それは表裏一体である。
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