『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第6章 習慣と態度―非意識説(その4)
3 態度 ― 思わず振る舞ってしまうのはなぜか
今日のところ、非意識説の最後は「態度」である。「態度」は(社会)心理学でモチベーションを説明する重要な要素となっている。その研究の歴史は古いが、近年「潜在的態度」の測定法、「潜在連合テスト(IAT:Implicit Association Test)」が開発されさらに発展を遂げている。
心理学での態度の研究はすでに100年以上前から始まっている。心理学での「態度」の定義は、日常用語とは違いって「特定の対象に関する注意や行為に対する準備状態」であり「(その人が持つ)行動や注意の傾向性」である。つまり、態度とは特定の対象における総括的な評価であり、具体的な行動に対する内的な準備状態(レディネス)のことである。
(社会)心理学では、態度こそがモチベーションを説明する心理的要因考えられている。
この態度は、
- ①.具体的対象がある
- ②.評価的である
- ③.体験を通して学習される
- ④.非意識的にはたらくことが多い
- ⑤.比較的安定した特性(傾向性)である
- ⑥.正負と強さの程度がある
の6種類の特徴を持つ。
この態度の仕組みとして、「三構成要素モデル」、すなわち「感情、認知、行動」の要因によって構成され、環境からの刺激により、3種類の反応、すなわち感情的、認知的、行動的反応を生み出すとするモデルがある。
この態度には、意識的にモニターできる側面(システム2)と自分ではコントロールできない潜在的、非意識的側面(システム1)があり、この非意識的側面がモチベーションに影響を及ぼしている。近年では、この「潜在的態度」の有効な測定法である「潜在連合テスト(IAT:Implicit Association Test)」が開発されて「オートマティシッティ革命」を牽引している。質問票などでは、システム2のバイアスのため本当の態度の測定が難しかったが、このIATテストでは直接潜在的態度を測定することができる。
このようにIATとは、特定の概念(態度の対象)と属性(良い性質-悪い性質)のペア刺激に反応する時間をデータ化することで無意識にはたらく潜在的態度を測定する独創的な手法である。ここでは潜在的自尊心を取り上げたが、他の潜在的態度(人種、ジェンダー、国家に対する態度)の測定にも広く適用されている。(抜粋)
態度がモチベーションに及ぼす心理的プロセスは、「三構成要素モデル」ほど単純ではなく、意図が行動に影響を及ぼす。そこで、その意図の影響を含めた「計画的行動理論」が提唱されている。
具体的には、パーソナリティ、性別、知識などの個人差を「背景要因」として想定した上で、行動の直接的な規定因としての「意図」は、以下の3つの要因に左右されるのだという。すなわち、①該当行動に対する態度(その行動が好ましいか否かの評価)、②主観的な規範(他者がその行動をすべきであると思っているかどうかの知覚)、③近くされた行動コントロール(その行動を遂行すること容易さに関する評価:自己効力など)の3要因である。(抜粋)
計画的行動理論は、他者の価値や自分自身の価値が態度とともに意図を規定するモデルであり、態度理論に期待×価値理論を取り入れている。
コメント