随伴性認知と学習性無力感
鹿毛雅治『モチベーションの心理学』より

Reading Journal 2nd

『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第4章 成功と自尊心―自信説(その2)
   2 随伴性認知と学習性無力感

モチベーションの自信説の2節、今日のところは「随伴性認知」「学習性無気力」である。この学習性無気力は、『無気力の心理学』でも詳しく解説されている。
(『無気力の心理学』では、「獲得された無力感」となっている。)


「やればできる」と信じる気持ちは、モチベーションを高める上で大切である。
このように「ある行動をすれば特定に結果が生じる」と思うことを、「随伴性認知」(=行動に結果が伴われるという認識)と呼ぶ。反対に、「どうせやっても無駄だ」と思うこと、つまり「自分が何かをしたとしても結果とリンクしていない」という知覚や信念を「非随伴性認知」と呼ぶ。
そして、「どうせやっても無駄だ」と思っている人よりも、「為せば成る」と信じている人のほうがやる気が高いと予測できる。

この随伴性認知の研究は、1960年代後半にセリグマンによって行われた動物実験にさかのぼる。(このセリグマンの実験については、『無気力の心理学』第一章を参照のこと)

セリグマンの実験とは、以下のような実験である。

  • 1.固定して動けないようにして、電気ショックを予告なしに与える
    その際に、次の3つのグループに分ける
    • 第一グループ[逃避可能群]:頭を動かしてパネルを押すと電気ショックを止めることができる。
    • 第二グループ[逃避不可能群]:自力で電気ショックを止めることができない
    • 第三グループ[統制群]:電気ショックを与えられない。
  • 2.柵で仕切られた2つのスペースがある実験箱にイヌをいれ、電気ショックを避ける訓練をする。
    イヌがいる床に電気ショックを与えるが、柵を飛び越えればショックを避けられる。しかも電気ショックに先立って灯りが暗くなる予告を与えられた。
  • この実験の結果は、
    逃避可能群と統制群のイヌはほとんど電気ショックを避けることを学習したが、逃避不可能群のイヌはおよそ4分の3が「ヒント」が与えられているにもかかわらず次々とやってくる電気ショックに耐えていた。
パネルを押せば電気ショックを回避できるという体験(つまり、「為す」が「成る」と随伴する体験)をした逃避可能群に対して、何をやっても電撃が回避できないことを学習してしまい、その先行体験があるために、いざ信号が合図に柵を飛び越えれば電撃を回避できる状況、つまり「やればできる」という環境下になっても、非随伴体験が尾を引いてしまい、回避行動を学習しなかったと解釈されるのだ。(抜粋)

このように「やっても無駄だ」という体験の積み重ねよって非随伴性認知成立し無気力を身につけてしまうことを「学習性無力感」という。そしてこの学習性無力感は人間にも当てはまる。
(この「学習性無力感」については、『無気力の心理学』第一章第二章第三章を参照のこと)

ここで教訓は、「やってもダメだ」と思うような体験が繰り返されないこと、そして達成に向けての当人の努力に対して相応の成果が伴う(随伴する)ことが肝心だという点だろう。「為せば成る」という体験それ自体を過去にどれだけ積み重ねているかが、当人の将来のやる気を左右するのである。(抜粋)

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