聞いてもらう技術 小手先編  /緊急事態編
東畑開人 『聞く技術 聞いてもらう技術』 より

Reading Journal 2nd

『聞く技術 聞いてもらう技術』 東畑開人 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

聞いてもらう技術 小手先編   緊急事態編

今日のところは、「聞いてもらう技術 小手先編」の緊急事態編である。「聞いてもらう技術」とは、上手くしゃべる技術ではなく、「情けない自分を分かってもらう技術」であった。前回の日常編「聞いてもらうための関係を作るために日常から心掛ける技術」であったが、今日の緊急事態編は「ほんとうに困ったときに聞いてもらう技術」となっている。では、読み始めよう。

聞いてもらう技術 日常編から緊急事態編へ

前回の日常編で日常での関係性を耕したところで、ここからは、緊急事態に聞いてもらうための小手先である。

「聞いてもらう技術」の本質は、何か苦境に陥ったときに「ちょっと聞いて」とまわりにいうことである。しかしこれが難しい。ほんとうに助け舟がほしいときには、「助けて」が言えない。

そこで、「聞いてもらう技術」緊急事態編は、「ちょっと聞いて」といわずとも、まわりから「なにかあった?」と聞いてもらうための技術である。

⑧ 早めにまわりに言っておこう

これは小手先というより本質的なことである。結局、治療よりも予防が有効であるので、困ったことになる可能性を早めにまわりに伝えておくことが有効である。言われた方もうれしいし、その人から陰に陽にサポートを得られる。すると事態は最悪まで至らずに、切り抜けられるようになる。

しかし、「事前に言っておく」ことも「ちょっと聞いて」と言うのと同じようにハードルが高い。⑨からは、何も準備なしに緊急事態になったときの小手先である。

⑨ ワケありげな顔をしよう

まずは、無理にニコニコしないで、「ワケありげな顔をしよう」である。行き届いていない自分をさらすと、まわりは「なにかあった?」と聞いてみたくなる。

著者は、これが得意で、大学に勤めていた時は「死んだような顔で出勤」していたそうである。そうすると以外にまわりは気をつかい親切にしてくれたと言っている。

迷惑がられたり、ウザがられたりする可能性も大であるが、まあでも「いいじゃないか」と思えばよい。そういう体験が、今度は自分が誰かの助けになろうと思わせてくれて、ケアが人と人の間を回るようになる。

⑩ トイレに頻繁に移行

「ワケありげな顔をする技術」の延長にあるのが「トイレに頻繁に行く技術」である。

これは、無理に行く必要はない。しかし我々は腹痛や頻尿などの時は我慢せずに授業中でも会議中でもトイレに行くべきである。
そうすると、まわりは心配になり、「大丈夫?」と聞きたくなってしまう。

同じように体調が悪いときは、素直に言う方がよい。体調の悪さは心の調子の悪さを上手く伝えてくれる。

これは医療人類学でよく言われることですが、東アジアでは、うつというものが心の落ち込みとしてではなく、体の不調としてあらわれるらしいんですね。(抜粋)

⑪ 薬をのみ、健康診断の話をしよう

「薬を飲む」ことや「健康診断の数値の話」をすることもよい

若いころは、老人が健康の話ばかりしているのをいぶかしく思っていましたが、僕が浅はかでした。健康談義は、存在そのものをケアしあい、社会を維持するための高度な知恵だと思います。(抜粋)

⑫ 黒いマスクをしてみよう

装いを変えるのもよい。マスクをくろいマスクにしたり、髪をバッサリ切ったり、金髪にしたり、坊主にしたり、鬚を剃ったり、ピアスを開けたり、コンタクトを眼鏡に変えたりなどなど。これは、変化をまわりに伝えるというところにポイントがある。

「助けて」と言う代わりに、黒いマスクをする。言葉にならないものを抱いていることを、装いを変えることで示すわけです。(抜粋)

⑬ 遅刻して、締切りを破ろう

なによりも失敗をやらかす、ことが良い。遅刻をしたり、締切りに遅れたりすると「なにかあった?」と聞いてもらえる。

もちろん、わざと失敗しなくてもいいのですが、具合が悪いときには僕らはどうしたって失敗しちゃいます。
それは聞いてもらえるために絶好のチャンスだと思うのです。(抜粋)

緊急事態編のまとめ

この緊急事態編は、まだまだたくさんのテクニックがあり、未完のテクニックだと著者とし、次のように言っている。

そうなんです。この「聞いてもらう技術」は未完成。ひとつ、絶対に必要なものが欠けている。
そう、あなたの協力です。(抜粋)

もし、まわりに「聞いてもらう技術」を使っている人がいたら、ただ「なにかあった?」と尋ねるだけでよいので、聞いてあげる。

「聞く技術」の本質は、「聞いてもらう技術」を使っている人を見つけ出すところにあります。(抜粋)

この「聞く」と「聞いてもらう」の二つが円滑に回る社会になった時に、「聞いてもらう技術」は誰でも使える技術となり完成する。

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