『忙しい人のための美術館の歩き方』 ちいさな美術館の学芸員 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
第1章 タイパの真逆にある美術館 2 「美術 = ビジネスマンに必須の教養」ブーム
今日のところは「第1章 タイパと真逆の美術館」“その2”、「2 「美術 = ビジネスマンに必須の教養」ブーム」である。に入る。前回“その1”では、美術館に「現役世代の人」が来てくれないこと、その理由として「時間がないから」が一番多いことが分かった。
今日のところ“その2”では、「現役世代が美術館に関心がないのか?」について、考える。そのためにここでは、「美術 = ビジネスマンの必須の教養」ブームを考察する。それでは、読み始めよう。
ビジネスパーソン向けの美術本ブーム
では、現役世代の人々は美術に関心が無いかと言うと、どうもそうではないようです。(抜粋)
ここで著者は、2010年代後半から「美術がビジネスマンの必須の教養である」という趣旨の本の出版が相次いだとし、その種類の本を列挙する。
- 『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』(山口周、光文社新書、2017年)
- 『西洋美術史 世界のビジネスエリートが身につける教養』(木村泰司、ダイヤモンド社、2017年)
- 『名画の見方 世界のビジネスエリートが身に着ける教養』(木村泰司、ダイヤモンド社、2018年)
- 『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』(秋元雄史、大和書房、2018年)
- 『一目置かれる知的教養 日本美術鑑賞』(秋元雄史、大和書房、2019年)
- 『「アート」を知ると「世界」が読める』(山中俊之、幻冬舎新書、2024年)
これらの本は、主なターゲットをビジネスパーソン、つまり現役世代に絞り、スティーブ・ジョブズ(Apple)、マリッサ・メイヤー(Yahoo!)、ジョー・ケビア(Airbnb)、前澤友作(ZOZO)などのビジネスエリートが芸術に親しみながら成功したとして、美術がビジネスの「武器」になるという趣旨である。
ロジカル・シンキングからアート・シンキングへの流れ
この「アート×ビジネス×教養」の流れから派生する形で、市民権を得たのが「アート思考」「アート・シンキング」という言葉です。(抜粋)
ここでも著者は、そのような「アート思考」「アート・シンキング」の本たちを紹介している。
- 『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』(秋元雄史,、プレジデント社、2019年)
- 『ハウ・トゥアート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法』(若宮和男、実業之日本社、2019年)
- 『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からアート思考』(末永幸歩、ダイヤモンド社、2020年)
- 『アート脳』(スーザン・マグサメン、アイビー・ロス/須川綾子訳、PHP研究所、2024年)
美の知識が教養としてビジネスパーソンの武器となるという考え方の延長で、具体的な有用性を期待させる「アート思考」へと関心が向かった。
著者は、2010年代前半まで「ロジカル・シンキング」流行ったが、いくら論理的に考えて実行しても現状が変わらなかった反省から、その行き詰りを打破するために期待されたのが「アート・シンキング」であると評価している。
ここで著者は、
しかし私が気になっているのは、ここで挙げた一連の書籍のヒットに見え隠れする「ビジネスエリート」という概念です。(抜粋)
と言っている。このような世界を飛び回り、商談の前にエスタブリッシュなアートの話題が欠かせないような人物は、自分のまわりにはいるはずのないスーパーマンである。これらの書籍は、そんな影法師のような人に近づくために美術の力が役立つと言っているのである。
きつい言い方をするなら砂上の楼閣といった印象が否めません。(抜粋)
考えられていた。
「すぐにわかる」系の美術関連本
さらに、「ビジネスに役立つ」系、「アート思考」系の美術本とともに、「すぐにわかる」系の美術本も人気である。
- 『大学4年間の西洋美術史が10時間でざっと学べる」(池上英作、KADOKAWA、2020年)
- 『1冊で学位 芸術史 大学で学ぶ知識がこの1冊で身につく』(ジョン・フィレー/上野正道訳、名取祥子訳、ニュートンプレス、2021年)
- 『世界の教養が身につく 1日1西洋美術』(キム・ヨンスク/大橋利光訳、上村博監修、日本実業出版、2023年):これは325日かかるので「すぐわかる」系ではないが、1日1ページ読めばよいという意味で同系列)
- 『美術館に行く前3時間で学べる 一気読み西洋美術史』(ナカムラニオ、日経BP、2024年)
私が興味を覚えるのは、ここで見てきたような本はいずれも、現役世代を主な読者に想定している点です。つまり、ビジネスで活路を開くために美術に注目しているのも現役世代なら、美術館に最も足を運ばないのも現役世代、という大いなる矛盾がここで生じているのです。(抜粋)
この章は、要するに著者の言いたいことは、最後の文章なんだけど、読書量すごいですよね。ちなみに、『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からアート思考』が一番褒められていたと思う。
あぁ、それからロジカル・シンキングってのは、何となく聞いたことがあるけども、アート・シンキングは、知りませんでした。つくジー遅れてますねぇ。(つくジー)
関連図書:
山口 周(著)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』、光文社(光文社新書)、2017年
木村 泰司(著)『西洋美術史 世界のビジネスエリートが身につける教養』、ダイヤモンド社、2017年
木村 泰司(著)『名画の見方 世界のビジネスエリートが身に着ける教養』ダイヤモンド社、2018年
秋元雄史(著)『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』、大和書房、2018年
秋元 雄史(著)『一目置かれる知的教養 日本美術鑑賞』、大和書房、2019年
山中 俊之(著)『「アート」を知ると「世界」が読める』、幻冬舎新書、2024年
秋元 雄史(著)『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』,、プレジデント社、2019年
若宮 和男(著)『ハウ・トゥアート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法』、実業之日本社、2019年
末永 幸歩(著)『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からアート思考』、ダイヤモンド社、2020年
スーザン・マグサメン、アイビー・ロス(著)『アート脳』、PHP研究所、2024年
池上 英作(著)『大学4年間の西洋美術史が10時間でざっと学べる」、KADOKAWA、2020年
ジョン・フィレー(著) 『1冊で学位 芸術史 大学で学ぶ知識がこの1冊で身につく』、ニュートンプレス、2021年
キム・ヨンスク(著)『世界の教養が身につく 1日1西洋美術』、日本実業出版、2023年
ナカムラニオ(著)『美術館に行く前3時間で学べる 一気読み西洋美術史』、日経BP、2024年

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