「時間はあるのに行けない」はなぜ — タイパの真逆にある美術館(その1)
ちいさな美術館の学芸員 『忙しい人のための美術館の歩き方』より

Reading Journal 2nd

『忙しい人のための美術館の歩き方』 ちいさな美術館の学芸員 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第1章 タイパの真逆にある美術館 1 「時間があるのに行けない」はなぜ

今日から「第1章 タイパと真逆の美術館」に入る。まずは「1 時間があるのに行けない」である。ここでは、数々のアンケートの結果を用いて、「現役世代の人が美術館から遠ざかっていること」、その理由として「時間がないから」が一番多いが、実は「余暇の時間が増えても、美術館には来てくれないこと」、などを考察している。それでは、読み始めよう。

美術館に行かない理由

まず、著者は「美術館に行けない理由」について、埼玉県が行った「県立博物館・美術館の利用について」というアンケートから考えている。その理由として

  1. 存在を知らなかったから
  2. 見たい展示や参加したいイベントがないから
  3. 仕事や家事などで忙しくて行く時間がないから

が上位の3つであった。ここでまず①の理由は、そもそも美術館自体に興味がない人である。しかし②、③の理由の人は多少なりとも関心がある人であると考えられる。

この②の理由は、美術館の企画次第で、学芸員腕の見せ所だが、③の問題は、美術館ではどうすることもできない。

余暇時間は増加と来館者数

ここではっきりと時間が無いから美術館に行けない人たちの存在が浮かび上がってきました。しかし、本当に現代人は時間が無いのでしょか。(抜粋)

日本の長時間労働は、少子化の原因、女性のキャリア形成、男性の家庭参加などの原因となり問題視されてきた。そして、2010年代後半から「働き方改革」が推進される。その改革の結果、週の合計労働時間は、大きく減少している。

しかし、著者はこの余暇時間の増加により、美術館に来る人が増えていないと感じている。また、インターネットによる調査でも、美術館に行く回数は以前より減っていることが示されている。

悲しいかな。やはり事実として、人は時間があっても前よりも美術館に行かなくなっているのです。(抜粋)

来館者の二極化

もう一つ、著者が問題視しているのは「来館者の二極化」である。美術館の来館者は「シニア世代」「20代前半の若者」に占められている。つまり、働き始める前と後の人だけが美術館に来るだけで、現役世代が全く美術館いき来ていない、ということである。

子育て世代と美術館

美術館に来ない「現役世代」の中には「子育て中の親」がいる。しかし、この「子育て中の親」には美術館側も積極的なアプローチを行っている。

子供と一緒に美術を鑑賞するには、「子供たちが騒ぐと迷惑になる」などの気づかいもあり、高いハードルがある。しかし、それに対しては美術館側も様々な方法で改善をしている。著者はそのよう配慮として行われているプログラムをいくつか紹介している。

  • 森美術館(六本木):子供とその親、妊娠中の人とその家族を対象に「おやこでアート」を実施。(開館前の時間にギャラリーツアーを行う)
  • 国立西洋美術館:「みんなでアートを楽しもう!おしゃべりOK!にぎやかサタデー」を実施。(キッズスペースや授乳室、おむつ交換スペースを準備)

このように、美術館では子育て世代の鑑賞に関する不安や不満を受け止めている

「透明化」した現役世代

私としては、子どもがいるから美術館に行けない、というわかりやすい理由よりも、時間があっても美術館に行けない人の方が問題は根深いように思います。(抜粋)

著者は、このような「透明化した」現役世代こそが問題であると指摘している。

そんなのもったいない!本気でそう考えるからこそ、本書の後半では現役世代が美術館に行くべき理由について、学芸員十数年の私の知識と経験を総動員して語りましょう。でも、まずは現役世代の透明化について考察を進める必要があるでしょう。(抜粋)

コメント

タイトルとURLをコピーしました