解説 筒井康隆
谷崎 潤一郎 『陰翳礼讃・文章読本』より

Reading Journal 2nd

『陰翳礼讃・文章読本』 谷崎 潤一郎 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

解説 筒井康隆

解説は、筒井康隆である。筒井康隆というと、谷崎潤一郎とはだいぶ違って、ユーモアある作風だったような気がしたのですが、なんでだろう?と思いました。それはきっと、解説の中でちょっと触れているのですが、筒井も『創作の極意とおきてという本を書いていて、それが縁になっているのだと思う。それでは、ラストスパート。


谷崎潤一郎の二大エッセイである。『陰翳礼賛いんえいらいさん』と『文章読本』が一冊の文庫本になるのでその解説を書けということだが、昔読んだことがあるだけに、大谷崎の本の解説など、考えてみればこんな恐ろしいことはない。(抜粋)

『陰翳礼賛』について

まず筒井は、昭和八年の出版物に筆ペンを希求していることに驚いたと言っている。それは、紙や筆へのこだわりの由縁であるが、「もし東洋に西洋とは全然別箇べっこの、独自の科学文明が発達していたならば、どんなにわれわれの社会の有様が今日とは違ったものになっていた」だろうというテーマの一環でもある。

そして、その時に礼賛するのは「陰翳」である。筒井は、最後の文章は全体の理解を深めるので、ぜひ音読して味わってほしいと言っている。

「私は、われわれが既に失いつゝある陰翳の世界を、せめて文学の領域でも呼び返してみたい。文学という殿堂ののきを深くし、壁を暗くし、見え過ぎるものを闇に押し込め、無用の室内装飾をぎとってみたい。それも軒並みとは云わない、一軒ぐらいそう云う家があってもよかろう。まあどう云う具合になるか、試しに電燈を消して見ることだ」(抜粋)

『文章読本』について

筒井は、『創作の極意と掟』を書く前に、この谷崎の『文章読本を』を読もうかと思い、しかし、影響をうけるのを嫌って読まなかった。そして今回、読み返してみると、現代文の嫌悪など、首肯できるところも多く「読まなくてよかった」と言っている。

文章の「音楽的効果と視覚的効果」は、これを無視して書いてはならないと「創作の・・」にも書いている。現代は、一般の手紙文や話し言葉になると振り仮名、送り仮名、敬語、言葉づかいなどあってないような状態であり、外国語の利用は、一般人が読むような広告文に至るまで蔓延している。

「文章読本」に述べられていることの多くが文章を書く人間としては老齢になるほど自然に首肯できるものになっている。(抜粋)

『言葉や文字で表現出来ることと出来ないことの限界を知り、その限界内にとどまること』であり、どんなに言葉を尽くしても緻密を求めると満足は得られない。そうであるから、あとは読者の想像や理解に委ねるのがよい。語尾の「た」止めが続くと調子が出て簡潔になるが、「た」音の響きが強いと軽薄に聞こえる場合がある。「簡潔な美しさと云うものは、その反面に含蓄が無ければならない」。などは、筒井自身も一番学ばなければならないと言っている。


関連図書:筒井康隆 (著) 『創作の極意と掟』 講談社(講談社文庫)、2017年


[完了] 22回

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