共感とは芝居上手 / LISTENせよ、ASKするな
東山紘久 『プロカウンセラーの聞く技術』 より

Reading Journal 2nd

『プロカウンセラーの聞く技術』 東山紘久 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

21 共感とは芝居上手

共感性

聞き手の必要な態度に「共感性」がある。「共感性」とは「相手が感じているように感じること」である。話し手からすると、聞き手に共感してもらってないと、話す気にならなくなってしまう。共感性は聞き手にとって絶対条件である。

ここで問題になるのは共感のしかたです。共感しているふりでは、話し手はどこか変に感じますので、見破られます。演技した共感や嘘くさい共感は、話し手をしらけさせ、ときに怒らせてしまう。(抜粋)

しかし、相手の話がどれほど悲劇的でも、相手に起こっていることで、自分に起こっていることではない。どうしても話すレベルと聞くレバルには、差がある。かといって、いい加減な慰めの言葉は、むしろ相手にわかってもらえないという気持ちを増大させる。そのような慰めは相手の気持ちに対して共感していないから言える言葉である。

芝居とは皮と肉の間にある

「芝居は皮と肉の間にある」、というのは、近松の有名な言葉ですが、まさに共感性をうまく言い表しています。(抜粋)

役者は役になりきるといっても「役」の人物に代わることではない。どんなにその人物に共感してもその人にはなれない。「役」に自分を乗っ取られては芝居にならない。
しかし、ファンの中には「役」の上の役者が現実だと思ってしまう人がいる。

これと同じようなことが「話し手」と「聞き手」の間にも起こる。「聞き手」に共感性がないと「話し手」が話を続けられないが、反対に「聞き手」の共感性が豊かすぎると、「話し手」が、「聞き手」と自分を同一化し「聞き手」の現実がわからなくなってしまう。

聞き手は話し手の気持ちを感じますが、現実には話し相手と同じ立場にありません。(抜粋)

話し手が聞き手に「どうしたらいいか」聞くことがある。このようなとき「聞き手」が「話し手」を同一視すると自分ならこうするという助言をしがちであるが、そのような助言が役に立つことはほとんどない。話し手と聞き手は違う存在だからである。

「それはあなたが考えることよ。私はあなたではないのだから」というのが正解ですが、でもこれでは何か冷たい感じが聞き手・話し手の両者に残るような気がしませんか。これが共感性のあぶないところであり、微妙なところなのです。聞き手は「皮と肉の間」を生きていくために、芝居上手であることが必要なのです。(抜粋)

聞き手と話し手は、心の中の交流であり現実の世界でなりかわることはできない。聞き手は、話し合っている時は話し手と同じ舞台に立ち共感することが大切であるが、それを舞台の外まで持ち出すことはできない。

聞き手は「大人である」ことが必要です。だから聞き手はいくら共感しても、話し手に代わって演じようとせず、あくまでも立場をわきまえた大人であることが必要です。(抜粋)

22 LISTENせよ、ASKするな

ASKで得られる情報

「聞く」という日本語には、LISTEN「聞く」という意味とASK「たずねる」という意味が含まれる。聞き上手の聞くは、LISTENすることである。

たずねると聞くとのいちばん大きな差は、「たずねる」のが質問する人の意図にそっているのに対して、「聞く」のは話し手の意図にそっていることです。(抜粋)

たずねてばかりで情報を集めると自分が望んだ情報ばかりを集めることになり、相手の立場からの情報が得られなくなる。そして集められた情報は聞き手のバイアスがかかってしまう。

対等な立場で聞く

聞く基本は、聞き手と話し手が対等な立場になることである。ここで、著者はカウンセラーがどのように子どもやお年寄りに対等な立場でインタビューをするかを具体的に説明している。

子どもと老人の二群の知恵者のことを話しましたが、基本的には、一般の人にみんな当てはまる原則です。話し手と聞き手との対等感が感じられたときから、話しはじめます。話はどんどん広がり、深まります。そして、話し手が聞き手と対等感がもてなくなると話が止まります。話し手は聞き手の人間性を確かめたくなるからです。(抜粋)

トス回しのように話す

女性がグループで話しているとき、グループでの話を独占することはできず、バレーボールのトス回しのようにして話題を変えている。これは対等な立場で話をしているからである。

彼女たちの会話は話題が飛ぶのが特徴ですが、それでも底には一貫した雰囲気が流れています。話題が飛ぶのは、パスとして次へ回すからです。次の人はその話題を受けて、方向を少し変えてパス回しをします。そのとき話題が変わったように見えるのです。対等感を大切にした会話をしようとすれば、こうするのがいちばんなのです。(抜粋)

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