暗黙の選択の利用(デフォルト)
大竹 文雄 『あなたを変える行動経済学』 より

Reading Journal 2nd

『あなたを変える行動経済学』 大竹 文雄 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第4章 暗黙の選択の利用

今日のところは「第4章 暗黙の選択の利用」である。本章は冒頭にこれまで学んだ「サンクコスト」「損失回避」「現在バイアス」の復習から始まる。そして、現在バイアスの対処法として、「コミットメント」などの紹介があり、いよいよ本章のテーマ「デフォルトの設定」の効果が説明される。それでは読み始めよう。

「サンクコスト」「損失回避」「現在バイアス」の復習

まず、これまで学んだ行動経済学的の重要概念である「サンクコスト」「損失回避」「現在バイアス」の復習から始まる。

サンクコスト(埋没費用)」とは、既に払ってしまって取り返すことができない費用のことである。著者は、すぐにあきらめないで我慢強くつづけることはとても大事な能力であると断ったうえで、

ただし、それが常に正しいとは限りません。したがって、大事な意思決定をするときには、「これはひょっとするとサンクコストなのに、しがみついているだけなのではないか」と考え直してみることが大切だということです。(抜粋)

と言っている。

私たちは、絶対的な水準で物事を判断した方が合理的な場合でも、知らず知らずに比較対象となる点(参照点)の影響を受けてしまう。そして、参照点よりプラス側だと嬉しいと思い、マイナス側だと悲しいと思ってしまう。そのためできるだけ「損失回避」しようとしてしまう。このようにわれわれには、参照点との比較で判断してしまうという特性があることを十分認識することが大事である。

また、わたしたちには、遠い将来のことであれば、我慢強い意思決定ができるが、今のことになると、先延ばしにしてしまうという特性・「現在バイアス」が存在する。この特性をあることを前提にして、非合理に見える意思決定がむしろ合理的であることがある。

「現在バイアス」の実験とその対処法

ここで著者は、「現在バイアス」の対処法を示すためにいくつかの実験例を示している。

計画を立てる場合には、その都度そのときの状況に合わせて最適になるような選択をする方が、合理的になる。しかし私たちは「現在バイアス」の影響で、その時に誘惑に負けて実行を先延ばしにしてしまう。そのため、実行できないのであれば、将来の選択肢を狭くしてしまうことが結果的に、目標を達成することができる。

このように、将来の自由度をあえて狭めてしまい、今、すべて約束してしまうことを「コミットメント」と呼ぶ。難しい教養映画を見に行くことを決めたのであれば前売り券を買ってしまうことが「コミットメント」である。また、コミットメントと似た方法に、細かい時間割を作ったり、締切りを短くして自由度を減らすことができる。

「デフォルト設定」(初期設定)による対処法

この「現在バイアス」などの行動経済学的なバイアスに対応する有効な手段として「デフォルト設定(初期設定)」がある。

ここでは、「ドナーカード(臓器提供意思表示カード)」のデフォルトを、「臓器を提供しない」から「臓器を提供する」に変えた場合、臓器提供の意思表示をする人の割合が大きくあがることが紹介される。これが「デフォルト設定」の効果である。

われわれは、よく分からないものに対しては、何も意思表示をしないほうを選びがちである(「不作為バイアス」)。臓器提供の例では、死後のことだからとデフォルトのままにしてしまう人が多いということである。

次に著者は、終末医療の「緩和ケア」か「延命治療」か、を選ぶような深刻な意思決定の場合でも、この「デフォルト設定」は影響することという実験例を紹介している。

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