[読書日誌]『アメリカ革命』
上村 剛 著

Reading Journal 2nd

『アメリカ革命』 上村 剛 著、中央公論新社(中公新書)、2024年
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

まえがき

現在進行形で『ポピュリズムとは何か』という本を読んでいるのだが、難しい。途中で投げ出しそうなところを『難解な本を読む本』の教えに沿って(・・・沿えてないかな?)ノートを取って少しずつ読解している。

本格的な本なので読むのが難しいのは、当たり前なのだが、なにせ基本知識がなさすぎると思った。欧米の歴史も分からないし、アメリカの憲法なんてさっぱりである。

そういう問題意識もあって、この本『アメリカ革命』を読んでみることにした。アメリカが独立し憲法をつくり、現在の繁栄の基礎を作った時期の歴史である。それでは、読み始めよう。


アメリカ革命 (American Revolution) とは、今日こんにちアメリカ合衆国となる国家の始まりを意味する。本書はアメリカ革命の歴史、その全体像を描くものである。(抜粋)

著者は、「まえがき」の冒頭をこのように書き、本書の目的を明確にしている。

ここでは、まずアメリカ革命がどのような歴史だったかを簡単に振り返る。もとイギリスの植民地だったアメリカは、「代表なくして課税なし」をスローガンに独立運動をし、一七七六年に独立宣言をした。そして最終的に一三の植民地が独立国家となる。

その後一七八三年までイギリスとの戦争が続くが、アメリカの勝利に終わる。そして一七八七年に一三州の植民地を束ねる連邦憲法が制定される。

アメリカ革命の歴史は、人々にあまり知られているとは言えず、また、アメリカ革命に関わった多くの人物についても思い出せる人は少ない。

このようなアメリカ革命であるが、その研究は近年著しく修正されている。たとえば

  • アメリカ革命というとき、その革命は何を意味するのか
  • 「代表なくして課税なし」というスローガンでは、イギリスが悪でアメリカが善と思いがちだが、それは本当か
  • 自由、三権分立、民主主義という現在では当たり前の概念であるが、その意味は誰にとって、どのように考えられたか

などは、今日改めて再考されている。

著者は、この本を

アメリカ革命がアメリカ合衆国の始まりを意味するならば、それはいったい何の始まりだったか。(抜粋)

という問いに沿って議論を進めるという。そして、そのすぐ後に、

答えを先に言うと、成文憲法の始まりこそ、アメリカ革命の最大の功績である。(抜粋)

といって、本書の立場を明らかにする。

成文憲法の制定に注目し、どのようにしてアメリカ合衆国憲法が作られたか、なぜ作られたか、制定後にどのような運用されたかを追いかけることでアメリカ革命を説明する。これが本書の基本的ストーリーである。(抜粋)

フィラデルフィアで行われた連邦憲法制定会議は、政治的な一大事件であった。そこに集まった人たちは議論をかわし、弱小国アメリカの発展のために智慧ちえを絞った。彼らは私利私欲のためでなく、祖国の発展のために智慧を絞ったことに間違いはない。そして出来上がったアメリカ憲法は、その後次々と問題にぶつかり、新たな議論や思想を加えられる。

その延長上に、今日のアメリカ合衆国が覇権国家に君臨している現状からして、アメリカ革命という始まりを理解することは重要である。それは同時に、憲法についても、そして国家の始まりの意義についても、今日の私たちに大きな示唆を与えよう。(抜粋)

関連図書:
ヤン=ヴェルナー・ミュラー(著)『ポピュリズムとは何か』、岩波書店、2017年
高田 明典(著)『難解な本を読む技術』、光文社(光文社新書)、2009年


目次 

まえがき [第1回]
序 章 国家が始まるということ――ローマ、アメリカ、日本 [第2回]
  国家の始まりとは何か
  日本国の始まりと八月革命説
  アメリカの始まりとは何か
  革命とは何か
  誰の革命だったのか?
  憲法制定という始まり
第1章 植民地時代――一六〇七〜一七六三年 [第3回][第4回][第5回][第6回]
  アメリカ史の起源
  四つの新視点
  三種類の植民地
  会社を起源とする国家
  特許状は武器である
  「有益な怠慢」は誤り
  ①エリザベス女王〜ジェームズ一世まで
  ②チャールズ一世・イングランド内乱期
  ③共和政期
  ④復古王政期
  ⑤名誉革命体制前期
  ⑥ウォルポール政権とそれ以降
  総督と植民地議会の対立
  コモン・ローをめぐる意見の相違
  参議会
  人々の暮らしと暴力
  家庭と労働
  さまざまな信仰
第2章 独立――一七六三〜一七八七年 [第7回][第8回][第9回][第10回]
  「代表なくして課税なし」は本当か
  経済学の勃興
  選挙なくても課税あり――議会主権
  本国との法的なつながり?
  陰謀論
  群衆の抵抗運動
  王党派と王への忠誠
  大陸会議、招集
  ジェファソンの論説
  独立戦争が始まる
  独立宣言
  邦政府での憲法制定
  連邦前夜――一三植民地をまとめた制度作り
  ワシントンの反撃
  連合規約の制定へ
  イギリスからの独立を達成する
  戦争終結
  一七八七年の北西部条例
  連合の機能不全
第3章 連邦憲法制定会議――一七八七年 [第11回][第12回][第13回]
  立法者たち
  会議の流れと始まり
  起――ヴァージニア案の攻勢
  激論
  誰が最高裁判事を選ぶか
  承――小さな邦の反発とニュージャージー案の提示
  黒人奴隷の人口カウント
  転――ハミルトンの大暴れ
  妥協への道筋
  誰が大統領を選ぶか
  結――大団円?
  署名へ
第4章 合衆国の始まり――一七八七〜一七八九年 [第14回][第15回]
  ペンシルヴェニアの批准
  『フェデラリスト』
  マサチューセッツの激戦
  ヴァージニアの論戦
  大統領をめぐる論争
  マディソンの変節
  アメリカ合衆国の出発
  ワシントン大統領の振る舞い
  第一議会の開催
  執行府の創設
  権利章典の作成
  課税から逃亡する人々
第5章 党派の始まり――一七八九〜一八〇〇年 [第16回][第17回][第18回]
  フランス革命の衝撃
  政府権力の強化――農業から商業へ
  世論と新聞の発達
  民主政が肯定的になる
  中立宣言と二つの党派の思惑
  対英強硬論とジェイ条
  ウイスキー反乱
  ワシントンの退任とアダムズ政権
  激化する先住民との対立
  初期の合衆国は弱かったのか?
第6章 帝国化と民主化の拡大――一八〇〇〜一八四八年 [第19回][第20回][第21回]
  戦争と民主政
  フランスからルイジアナを購入
  一八一二年戦争
  南部戦線の拡大スペインとの関係の変化
  強い帝国
  黒人奴隷と経済発展
  銀行制度の発展とバブル
  ミズーリの妥協
  先住民への支配
  アダムズからジャクソンへ
  トクヴィルが見たアメリカ
  アメリカ革命の終わり
終 章 南北戦争へ [第22回]
  始まりの終わり
  本書のまとめ
あとがき

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