「星の王子とわたし」 内藤 濯 著
[Reading Journal 1st:再掲載]
(初出:2007-02-08)
星の王子周辺 感情生活(一)、感情生活(二)
サン・テグジュぺリは、一九二七年にアルゼンチン航空会社を指揮することになって、ブエノス・アイレスに行く。主な仕事は海岸沿いの新しい航空路を開くこと。
ブエノスアイレスで彼の孤独感は強まり、結婚欲がしだいに高まっていった。
ところで、そういう心境にあったサン・テグジュぺリの前にあらわれた女性がある。コンスエロ・スンシンという女性で、「星の王子さま」の中心となっている一輪のバラの花、自分の美しさを鼻にかけて、おもわず王子の運命を左右するバラの花のモデルとなったという存在である。(抜粋)
コンスエロは小柄で美しく、英語とスペイン語を交えてフランス語を話す魅力的な女性だった。しかし、すぐにばれそうな嘘をつくようなところもあり、サン・テグジュペリ関連の著作でも、コンスエロについては口を噤みがちである。
コンスエロからは、サン・テグジュぺリに多大な影響を及ぼした。
いよいよ「星の王子さま」のバラの花が問題になってくる。コンスエロの行動と性格とが、あらまし「四つのとげをもった」バラの花で象徴化されているからである。
ーーー王子さまのその花は、ある日、どこからか飛んできた種が、芽をふいた花でした。
ーーーその花は、王子さまがこれまでその星の上で見た花とは、似ても似つかない花でした。
ーーー王子さまは、この花はあんまり謙遜ではないなと、たしかに思いはしましたが、でも、ほろりとするほど美しい花でした。
ーーー花は咲いたかと思うとすぐ、自分の美しさを鼻にかけて、王子さまを苦しめはじめました。
そういうバラの花の美しさは、けっきょく咲いているだけの美しさだった。うわついた美しさだった。そしてそういう美しさのうしろに隠れていたコンスエロは、静かに落ちついているかと思うと、へんに荒立つし、物やわらかに振舞うこともあれば、怒りっぽく物を言うこともあり、衝動的で芝居気たっぷりで、その場その場の気分で動くきりの女だった。したがって堅実な人も、どんなに確乎不動な人も、そのような女性からは、良かれ悪しかれ影響を受けないわけにいかなかったらしい。(抜粋)
一九三二年、サン・テグジュぺリはブエノスアイレスをさりパリの人となる。


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