「星の王子とわたし」 内藤 濯 著
[Reading Journal 1st:再掲載]
(初出:2007-02-03)
星の王子周辺 嵐の避場
よく知られているように『星の王子さま』は、第二次世界大戦中、サン・テグジュぺリがアメリカに亡命している時に書かれた。祖国フランスはナチスドイツに征服され、フランスに残る親友のイスラエル人、レオン・ウェルトの事を思うと心が痛んだ。
そのあげく彼は、「或る人質への手紙」(一九四三)という小冊子をレオン・ウェルトに書きおくって、何ものにも代えがたい友情のうちに、おそろしい戦争からの避場をみいだそとしたのである。しかし、事はそれだけでは足りなかった。航空に一身をうち込んでいる彼は、どうかすると、二度とこの世でくだんの友人と顔を合わすわけに行かなくなるかも知れない。だとすれば、言わず語らずのうちに築かれている友情だけではなく、たましいそのものを、形見にして遺さねばならぬ。そう思ったあげくレオン・ウェルトのために一つの物語を書いた。それが「星の王子さま」である。


コメント